オナン

Date
2006-04-11 (火)
Category
novel

 備後地方の山岳地帯の集落にオナンという名の青年がいた。この青年、若さの盛りであったが彼の生活には全く女っ気というものがない。 村にも年頃の娘は数人いたのだが、彼はとてつもなく小心者であったためまったく声をかけることができないのだ。 そのため夜這いなどはおろか話すことさえままならぬ状態であったため。自分で自分を慰める他なく毎日自慰にふける事が日課になっていた。

 彼が自慰にふけっているときに頭に思い描いているのは村で一番美しい さやという娘のことである。 日ごろ遠くからさやを見ているだけのオナンであったが 自慰にふけっているときだけは、煩悩の中ででさやの体を思う存分撫で回し、 恥辱の限りを尽くすのである。しかし、それはただ単にオナンの妄想の中のでき事 でしかないので、 実際に現実でそのような事態が起こりうるわけもなく、 ただ悶々と、 今にもさやに飛び掛って犯してしまいたい欲求を心に秘めたまま毎日を過ごすのであった。

 

 オナンはさや好意を寄せていながらその体を奪おうとしなかったのは、犯した後で 村役場の地方裁判所兼、簡易裁判所兼、 家庭裁判所で村社会特有の排他主義のもと 弁護士抜きで裁かれるのが怖かったからなのではなく、 ただ単純にそれだけの度胸がなかったからである。 そもそもこの近辺の集落は県庁所在地から遠く離れていたため家というものに固執する武家社会の影響が薄く、性に対してはひどくいい加減で 、 兄弟、姉妹で父親が違うのかどうかもはっきりわからないばかりか中には近親相姦で生まれた子供も少なからずいるような社会文化なので、 例えオナンがさやをてごめにしても、よほど無理やりでもない限り罪に問われる事はない。しかし、オナンにはそういう考えはなく、 なんとかさやと夫婦(めおと)になる手段は ないものかと考えていたのであった。そうすれば晴れて初夜を迎えることなり、 おのずと誰も手をつけてないという彼女の貞操を破ることができるからである。 そのことを想像するだけでオナンの局部は今日も怒張するのであった。

 二年後のある晴れた日、めでたく、さやの祝言(しゅうげん)の日取りが決まった。婿殿はは隣の 集落の地主の家の息子で、 みめ麗しいさやの噂を聞きつけ村にやって来るなり、あっという間に さやとの結婚を決めてしまった。 さやの両親は娘が玉の輿に乗ってくれただけでなく 準備金だけで5両もの大金を手に入れたことに大喜びしたという。 同じ村に住むオナンもその噂を当然聞いていた。なんとかこの結婚を止めなければと思い。村の寄せで隣の地主の悪口を出まかせで言ってみるが、 村にとってもめでたいことを前にそんな縁起の悪いことを言うなとたしなめられてしまう。 そればかりかオナンの二つ年下の五十六(いそろく)にオナンがさやに心を寄せているからそんな戯言を言うのだと指摘されその場で大いに村の男たちに笑われ恥をかいてしまう。

 祝言の日、オナンはさやの花嫁行列を見物に行くこともできず、家の中で一人 こもっていた。 村人に自分がまた嘲笑されるのではないかと怖かったし、 何よりも心を寄せていたさやがついに自分の物にはならないと自覚させられること嫌だったからだ。 そして見苦しいことにその時になっても薄明かりの差し込む自分の家にさやが本当は自分と一緒になりたいと言って戸を叩いて来てはくれないかという、 絶対にありもしない期待を想像しては打ち消すことを繰り返していた。 日も暮れ、 みなが眠りにつく時間になるとようやくそんなことはありもしない、 もう、さやの処女は他人のものになってしまったのだと自覚したのである。 それでもしっかり、その日も自慰はした。これがさやをオナペットにして して行う最後の自慰だと自分に言い聞かせ、 厳(おごそ)かな儀式のように取り行った。イッた後、ちょっとセンチメンタルな気分になった。

 オナンはさやを処女と思い込んでいたがそれは実のところ間違いである。 さやが処女を失ったのは12歳の秋に酒に酔った叔父に裏の納屋で犯された時で 、 家族はさやの様子にことを察したが犯人が寝ている叔父であると分かると、身内の恥を恐れて 誰もそのことに口を開こうとはしなかった。 当のさやはどうしたかというと 家族のその見てみぬふりに何か自分が悪いことをしたように幼な心に感じ、それっきり無理やり忘れてしまった。 ちなみに一夜寝てしらふに戻った叔父は覚えていない。 そのあとは、14歳のときに夏祭りの最中、着替えに家に戻った際、 兄弟のように中の良かった隣の家の二つ年下の五十六(いそろく) と。 童心に戻ってじゃれていたらなんとなくそんな気分になってことに及んでしまった。 結局、 そんなことを間を置いて繰り返したりしているうちにいつの間にかどっかの 地主の息子が来てさやを気に入って、両親が喜んで、 なんとなく結婚が決まってしまった というような次第である。ついでに言うとさやは母親似であったので村の誰もが気がつい ていないのだが、 実はさやは五十六の父が夜這いして孕ませた子だったので 五十六とさやは異母兄弟にあたるのだった。 その事は山間の閉鎖的な環境にあった村では村人全員親戚みたいなもので、 たいした問題ではないのだけれど…。

 オナンはもうその村にいることが居たたまれなくなって旅に出ることにした。 村の女は他にもいることはいたのだが、 思い込みの激しいいわゆるストーカータイプ のオナンにとってさやへの思いを断ち切ることはできなかったのだ。 オナンはさやに依存しない新しい自分を見つけることを心に誓い、 山陰地方に向けて中国山地を進むのであった。 途中彼は突然もよおした。 尿意をもよおしたのではなく劣情をもよおしたのである。 1日3回、欠かさず抜いて来た、彼の睾丸は並外れて鍛えられており、 通常の成人男子の 四倍の速さで減数分裂を繰り返し、精子を大量に生産しているので午前中に3発ぶんくらいは 簡単にたまってしまうのだ。 しかし、彼には紙がなかった。勢いよく精子を発射して飛行距離でギネスを更新したとしても 結局、先っぽは濡れてしまう事には変わりがない。 その状態でブリーフを穿いたら前の部分 に黄色いシミができてしまうだろう。オナンは今、 道端で自慰を開始することによって発生するであろう未来の危険性をこのように推測していた。そこが猿と人間の違いである。 さりとて、 このいきりたつ棒をどうしたものだろうか? このまま男根を突っ立たせたまま歩くのは道行く人に変態と思われかねないのでベルトの部分にそらせた状態でひっかけてみるのだが、 これがなかなか気持ちよく かえって萎える事もできない。 どうしたものか、やはりこのままでは体に悪いだろうから草陰で処置しようと思い、 オナンが一帯に生える熊笹を掻き分けて森に入り込むと近くでサラサラと水の音が聞こえる。 さらに奥に進むとなんとそこには綺麗な泉があった。 なんと幸運な事か!これならば紙でふかなくても洗うことができよう。 オナンは早速おっぱじめた。そうしたら出るわ出るわ、もう、あー …よく出るな~。 オナンは一息ついた後、 泉の水で半萎えのちむぽを清めようとしたところ、手を滑らせて 泉の水に落ちてしまった。やっとの思いで這い上がってくると、 オナンはなんだか 体の隅々に力がみなぎってゆくのを感じた。 実はその泉の水は聖なる力の水でそれをかぶった人間は刃物を通さない強靭な肌と 比類なき力を手に入れるおそるべき超神水だったのだ。 しかし不思議とオナンのちむぽだけは、萎えたままで全然力がみなぎるような ことは無かった。 オナンはなんだか自分がえらく強くなったような気がして あっという間に野山を駆け抜け人里に辿り着いた。

 オナンが里を歩いてみると人々は慌しくしていた。 なんでも戦が始まるそうで女子供は逃げる用意を、 男は戦うための準備をしているのだった。 よくわからないがとにかくやたらサカりのついていたオナンは自分も戦に参加して手柄を立ててやろうと思い。 即刻、 平野の向こうに布陣していた敵軍の総大将のところに走っていった。オナンを止める者は誰もいなかった。 なんせ貧しい農民の男が武器も鎧も何も身に付けずにやって来たのだから。誰を警戒しようはずがない。 ところが無敵の肉体を手に入れていたオナンは素早く入り込むなり大将首を素手で引っこ抜いてしまった。 それらを見た兵士たちは口々に 「鬼じゃ~」と叫んで蜘蛛の子を蹴散らすように逃げていった。その後も勢いづいたオナンは戦場を渡り歩き、殺戮の限りをつくした。

 オナンはなぜかなんだかムカついていたので、殺って姦ってヤりまくりました。 でもある時、大切なことを思い出しました。 さやの事です。 今すぐにさやを取り戻しにいこう。そう思い立つやいなやオナンは走り始めました。 さやは一時的に他人の物になってしまったけれども最終的に 自分のものになればそれでいいじゃないかと、 そういう気分にようやくなれたからです。 走って走って走りました。 そうやく例の地主の家に辿り着くと戸を叩きます。 さや!さや! 出てきておくれ。僕だよオナンだよ。 ちょうど出かけようとしていた地主(元地主の息子)が門を開けると。 オナンの顔を確認する前にもう地主は死んでいました。 コンマ2秒で四百十数あまりの肉片になり門の扉の染みと化したからです。 それ見ていた使用人は恐ろしくなって手に持っていた茶壷をオナンに投げつけましたが、 オナンの体は鋼のよう硬いので、 パリンと割れて砕け散るだけで何の効果もありませんでした。 そのときパリンと割れたのは茶壷だけでなく、使用人の頭蓋骨も砕け散りました。 外側を完全に壊されてしまったので使用人の脳は慌てて這い出て植木の陰に隠れました。 思ったより動きが素早かったので、 オナンは探し出して潰すのもめんどくさいので さやを先に探すことにしました。 オナンよりさやの元に先回りしていた使用人の脳はコプコプとさやに地主の死を告げました。 さやは夫である地主の死をとても悲しみましたが、 すぐに自分を身を守るために弓を持ち出して来ました。そして弦を張ると、ちょうど そこへオナンがやってきたのです。オナンは言いました。

「さや!僕だよ、オナンだよ。覚えているかい?」さやは覚えていませんでした。 五十六のことは覚えていても村で全然存在感の無いオナンのことは覚えていないもなにも、 村にいた時さえ、「あの人」っていう程度で、 名前さえよく覚えていなかったからです。 さやはきっとこの人(オナン)は気が触れた人間で、 刑務所内の精神病院から逃げ出してきた要危険度SSS級の筋金入りの鬼痴害なのだろうと思い、 何の躊躇もなく弓につがえた矢をオナンに向けて放ちました。放たれたは一直線にオナンを貫いて庭の木に突き刺さりました。 オナンは「・・ さや」と呟いたのを最後にその場にバタリと崩れ落ちました。そのあと、FBIが来てオナンの体を回収していきました。 検死室で特別捜査官のスカリーが調べて見るとオナンの体はほとんど灰色の皮膚で覆われていましたが一箇所だけ普通の人間同様の肌色の部分がありました。 そこはオナンのちむぽでちょうど指のかたちに普通の肌があり、そこを矢で射抜かれていたのです。 その後の特命リサーチの報告によるとオナンの体のほとんどは泉に落ちたとき無敵になったが、 ちむぽだけは水中でもしっかりと離すことはなかったので。結局そこは通常の人間の肌のまま だったということでした。

かわいそうなオナン。オナンはパトラッシュと天国に逝きました。  この話が語源となって人は自慰のことを後にオナニーと呼ぶようになったそうです。完

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